私の視点 国際感染症 他分野の人材育て貢献を

最終更新: 2019年8月30日

私の視点

◆国際感染症

多分野の人材育て貢献を

 エイズ・結核・マラリアによって、毎日世界で2万人近い命が失われている。その8、9割は途上国。特にエイズによって、平均余命を6歳以上も引き下げる国もあるほどである。

 大学教員だった私は、任期付き職員法による外務省の民間人材採用第1号として、沖縄感染症対策イニシーアチブを中心に日本の保健医療援助政策にかかわっている。日本は世界100カ国以上で感染症対策を支援

している。成功のカギは人だが、途上国のみならず、日本の人材も質的量的に不足していると感じる。

 感染症対策に必要なのは、医療専門家だけではない。社会・人類学、教育、農村開発、果ては青少年活動など様々な分野の協力が必要だ。特に、アフリカのエイズ対策には、人々の価値観、社会経済状況など様々な要因を考慮し、中央から草の根、職域から学校・地域、治療から予防・ケア・サポートまで多様なアプローチが求められている。

 こうしたニーズに応え、青年海外協力隊に「エイズ対策隊員」がこの春から新設された。エイズ対策の知

識・経験が豊富な日本人は少ないだろうが、途上国政府・民間組織からは、組織運営やプログラム作り、コンピューター情報管理、ビデオなどの予防教育教材作り、エイズ孤児のケア、雇用促進など、日本人の優れた能力を生かし支援してもらいたいと期待は大きい。

 日本人ボランティアの現地での適応能力、学習能力にも定評がある。協力隊のみならず、国連ボランティア、非政府組織(NGO)など、最近では日本の若者の活躍できる機会が増えている。現場経験を積んで、日本の将来、さらに世界に貢献してほしい。

 一方で、世界保健機関(WHO)などの国連機関の専門家、途上国政府への政策アドバイザーなど、高い門能力を要する人材も必要である。私が途上国援助に携わった20年前に比べ、国際協力にかかわる人の数は増えた。しかし、国際レベルで活躍できる日本人はいまだ少ない。

 私自身、医学生時代および卒業後、NGOを通じて難民援助にかかわる中で、情熱や医師としての技能だけでは、眼前に横たわる何十万の病める人々を救えないと無力感に襲われた。国際保健を学ぶため米国の大学院に留学し、世界中から集まる医療者、ジャーナリースト、法律家、社会学、教育学など多分野の人々と、政治、経済、人権、様々な視点から世界の健康問題とその解決方法を学んだ。

 これらの知識は国連機関、欧米の援助機関やNGOで保健医療に従事するには最低限といわれる。例えばこうした専門家は米国のあるNGOで約100人、世界銀行に約200人、米国国際開発庁では約400人いる。日本では外務省に私1人、他の政府機関を含めても私の知る限り50人に満たないと思う。援助の戦略性、整合性、質を高めるには、多分野の専門家が政策・戦略作りに参画し、プログラムやプロジェクトの計画・運営・評価に総合的にかかわる必要がある。

 欧米では人材交流が盛んである。大学から政府機関、政府機関からコンサルタント、NGOから政府機関など、人材の自由な流れは、組織も歓迎する。その中で人材が育ち、組織も活性化し、援助の質も向上する。日本も今後、組織間の敷居を低くし、オールジャパンとして国際的に通用する人材を育て生かすための戦略を練るべきであろう。


※本記事の出典や掲載日時は不明です。





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