ソマリアの子に光を10/下野新聞(2013年1月28日)

最終更新: 2019年8月30日

ソマリアの子に光を10 ユニセフ國井医師リポート

 干ばつは天才、飢饉は人災:早期警報システム構築へ

 一昨年から昨年にかけて、過去8年間で最悪の干ばつがソマリアを含むアフリカの角5カ国を襲った。地域全体で1300万人以上が食料不足にあえいだが、中でもソマリアでは400万人以上が食料危機、0万人以上の子どもが死にひんすることになり、飢饉が宣言された。

 干ばつとは、雨の降る一量や期間が極端に減少して農作物の不作、家畜の死亡など人間生活を脅かす現象。一方、飢饉とは干ばつを含む様々な要因で食料不足が進行し、栄養不良と死亡が増えた状態である。食糧安全保障の国際分類では「地域人口の20%以上が深刻な食料不足」「5歳未満児の30%以上が急性栄養不良」「1日あたりの死亡が1万人あたり2人以上」の三つの要件がそろって初めて飢饉となる。「千ばつ=飢餓」ではない。

歴史を振り返ると、世界では干ばつから飢饉となり、栄養不良や感染症が蔓延して数万人、時に数百万人が死亡すること一もあった。日本でも飢饉で多くの命が失われた。

 しかし国際貿易・流通が発達し、食料輸入・備蓄がなされ、緊急時には世界中から支援が集まるようになった今日、干ばつが起きても飢饉にまで進展するケースは少なくなった。

 それでも政治体制、社会状況、治安などの問題により、干ばつ発生後の対策・支援が不十分であれば、飢饉に進展することはある。「干ばつは天災、飢饉は人災」といわれるゆえんである。

 ソマリアでは私が赴任した2010年、既に干ばつが始まっていた。対策の必要性を訴えるも、世界の反応は鈍かった。ソマリア国内では紛争が絶えず、援助機関への活動妨害、人質や殺害事件も横行した。支援がなかなか進まなかった。その結果、干ばつは進行し、食料不足や食料価格の高騰により、多くの子どもが栄養不良に陥った。感染症が蔓延し、死亡率が急上昇した。

 子どもたちの悲惨な栄養不良・死亡の状況をみて、やっと国際社会も動いた。資金が集まり、大規模な緊急支援を行えるようになった。食料支援、栄養治療、予防接種、水衛生供給など、1年近く。の人道支援の結果、死亡一・栄養不良は減少し、飢饉は終息した。

 しかし私には、初動が早ければ、資金が早く集まれば、失われた多くの子どもの命を救えたのに、と後悔の念が残る。

この教訓を基にわれわれが今、行っていることがある。飢饉の早期警報一システムの構築である。ソマリア各地の降雨量の予測と共に、定期的に農作物の収穫高、主要食品の流通と価格、食料の輸入量、子どもの栄養不良率と感染症流行などを調査し、その推移を分析する。

 危機が迫れば、早期に国際社会にアピールをし、資金を集め、予防・対策につなげるのである。

天災を避けることは難しい。しかし、人災を避けることは不可能ではない。

(ユニセフソマリア支援センター保健・栄養・水衛生事業部長・國井修=大田原市出身)


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