「どれだけ救えるか」にやりがい/産経新聞オピニオン(2016年1月15日)

最終更新: 2019年8月30日

「どれだけ救えるか」にやりがい

<長年、現場を飛び回ってきたが、現在は最前線から離れている>

 ぼくはこれまで、3年から5年くらいのサイクルで、異なった場所で仕事をしてきました。 3年間ソマリアで働いた後は、他のアフリカの国で働こうと思っていたら、ある人から世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド=GF) の戦略・投資・効果局長の空席情報に応募することを勧められた。 戦略を作れるならおもしろいと思い、応募しました。

 こうすれば感染症対策と保健システムを連携できる、支援の効果を上げるにはああすべきだ、など現場から発信したいことが多くありました。 ユニセフ本部で保健戦略アドバイザーをやっていたこともあるので、現場の知見を戦略につなげる方法も、ある程度知っています。最悪の国といわれたソマリアやミャンマーで培った挑戦心や諦めない心もあります。 大学や外務省でき、NGOの創設にかかわった経験は、 政府、国運から市民社会、当事者まで巻き込んで対策を行うGFで生かせると思いました。

 NGOをやっていたとき、活動を動かすのは情熱だと思っていたけれど、現場では資金がないと何もできません。いい活動を始めても継続できないこともあった。特に感染は局所的、一時的な対策では制圧きません。相応の資金と緻密な戦略が必要なんです。

<国際医療に飛び込む若手に期待する>

 日本国内にも医 療や年金など多くの課題はあると思います。でも、医療も年金もない貧しい国の現状にも目を向けてほしい。日本人のコミュニケーション能力は低く、国際社会で働く障壁となっていますが、人を押しのけない、人の手柄を取らない、まじめにきちんと仕事をするなど評価も高い。

 医学生に講義をすると、その1割くらいは海外で働きたいというんです。でも、専門医になり家庭をもつと、ためらう人も多くなる。 欧社会ではアフリカでの経験が評価されることも 多いけれど、日本ではまだマイナス面が目立ちますからね。よほど好きじゃないとできない。

 ぼくはよほど好きだったんですね。でも、それが基本だと思います。 夢は大きくて単純な方が、そこに向く力、ベクトルが強い。ぼくは単純な人間なので、若いときの夢や志を今も大切にしています。 ただし、経験を積むにしたがって夢の形は変わってもいい。 ぼくもアフリカで医者として患者を診るのではなく、戦略作りや対策プログラムの促進に力を注いでいます。そして、どうやってもっと多くの命を救おうか、 夢は膨らんでいます。

 若い人たちも心躍るような夢を抱き、突き進んでほしい。 世界には知らないことがたくさん 待ち受けていて、人生を豊かにしてくれる。人を幸せにしながら、自分の人生も豊かになる。それがグローバルヘルス (国際保健)の醍醐味です。

(聞き手道丸摩耶、写真も)





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